弁護士工藤寛太(京都弁護士会所属)の彦根簡裁への旅(2)

京都の弁護士、工藤寛太です(京都弁護士会所属)。

先日、彦根簡易裁判所で裁判がありました。そこで、本日は、彦根簡裁への旅第2弾についてのブログです。第1弾は、7月8日に書いていますので、ぜひご覧ください。

2か月前と同じく、京都駅からJRで彦根駅へ向かいます。

彦根駅に着くと、2か月前と変わらない姿で、ひこにゃんが出迎えてくれました。

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このひこにゃんの隣には、井伊直政公の像があります。

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ひこにゃんがかぶっている兜は、彦根藩の藩主である井伊家の兜なのですが、2つを比べると確かにそっくりです。

ひこにゃんに別れを告げ、10分ほど歩くと、彦根城のお堀が見えてきます。

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相変わらず、この橋の向こうに裁判所があるとは信じられない雰囲気ですが、2か月前に1度通った道なので、今度は確信を持って橋を渡りました。


肝心の裁判ですが、公示送達による送達であったため、被告は欠席でした。

裁判が提起されると、裁判の内容を相手方に伝えるため、裁判所書記官は、相手方に対して裁判に関する記録を送付します。これを「送達」と呼び、送達が完了すると、裁判を開始することができます。しかし、時には、裁判の相手方の所在が不明で、色々と調査をしたがどうしても送付先の住所が判明しない、という場合もあります。このような場合には、裁判所の掲示場に、「送付すべき書類を保管していますので、書記官室まで取りに来てください。」という趣旨の掲示をすることができます。これを「公示送達」と呼んでいます。原則として、この掲示がされてから2週間が経過すると、送達の効力が発生し、裁判を開始できるようになります。

公示送達をまめに見ている人はいないでしょうから、公示送達がなされた事件のほとんどは、今回の彦根簡裁の事件のように、被告欠席となると考えられます。では、裁判に欠席するとどうなるのでしょうか。

まず、通常の送達がなされた事件では、裁判を欠席し、何の反論もしなければ、原則、相手方の主張する事実を全て認めたことになってしまい、原告が提出した証拠を取り調べることもなく、原告勝訴の判決が下されます(擬制自白、民事訴訟法159条1項)。しかし、公示送達という、事実上被告の出頭・反論の機会が奪われている場面において、このルールを維持することは、被告にとってあまりに不利益が大きすぎます。そこで、公示送達により裁判が始まった場合には、この擬制自白が成立しないという法律の規定になっています(民事訴訟法159条3項)。そのため、裁判を起こした原告は、しっかりと証拠を使って自らの請求に理由があることを証明しなければ、裁判に負けてしまいます。

大学生のころに、この民事訴訟法のルールを知って、法律ってよくできてるな、と思ったのを今でも覚えています。