京都の弁護士真田千雅子(京都弁護士会所属)の書籍紹介

 こんにちは、京都の弁護士の真田千雅子です(京都弁護士会所属)。

 

 本日は、最近私が読んだ本をご紹介いたします。

 その本とは、阿川佐和子さんの著書、『聞く力 心をひらく35のヒント』(文藝春秋)です。

 

 この本では、阿川佐和子さんがこれまで多くの著名な方々にインタビューされてきた経験をもとに、人の話を「聞く」ということがどういうことなのか、「聞く」コツが紹介されています。

 テレビ等で阿川佐和子さんが様々な方にインタビューされている姿を拝見して、人の話を聞くのが非常に上手な方という印象を私は持っていました。

 もっとも、仕事を始めた当初から人の話を聞くのが得意だったわけではなく、多くの失敗を重ねながら試行錯誤して今日に至られているということが、この本には書かれています。

 十人十色という言葉があるように、人はそれぞれ異なった性格や特徴等を持っています。初めて会う人が、どのような性格・特徴を持った人かは、会話して初めて気づくことができます。このことから、初対面の人から話を聞く際には、相手に失礼なことを言わないだろうか、寡黙な人だったらどうしよう、などといった不安でいっぱいになるものです。阿川佐和子さんも、対談に出掛ける前には今でも緊張されるそうです(テレビ等で拝見するかぎり、とても堂々とされているため、緊張されているようには見受けられませんが...)。

 

 『聞く力』のなかで、「質問は1つだけ用意しなさい」というフレーズが登場します。

 学生時代、私は、卒業論文を書くために、阪急百貨店のバイヤーの方にインタビューをしたことがあります。私の卒業論文のテーマが、物産展を通じて現代の消費活動を分析するというものだったからです。

 当時、私はインタビューなどまともにしたこともなく、バイヤーの方に、何を、どの順番で、どのように聞いたらよいのか全く分からず、思いつくままに20項目以上の質問を紙の上に並べ立て、その順番通りに質問したように記憶しています。

 おそらく、質問されたバイヤーの方からしてみれば、質問の趣旨も分かりにくく、とても回答しにくいインタビューだったに違いありません(それにもかかわらず1つ1つ丁寧に答えてくださったバイヤーの方には、今でもとても感謝しています)。

 この本では、あらかじめ質問項目を用意しすぎると、相手から予想外の回答が返ってきたときに、質問の順番をどのように変えようといった点に自分の思考が集中し、まともに相手の話を聞くことができない状態になってしまうということが指摘されています。

 学生の頃の私も、まさに上記の状態に陥っていたと、今思い返すと反省すべき点が多かったと思います。

 相手の話を聞きながら、その回答に合わせて次の質問事項をその場で考えるということは、実践してみると非常に難しいものですが、相手の話を楽しみながら聞くためには、大切なことであるということに気づかされました。

 

 私たちは、日々の生活の中で、人の話を聞くことを繰り返しています。家族とその日あった出来事について話すとき、友人とお互いの近況について話すとき、会社で上司から仕事の指示を受けるとき、など数え始めるとキリがないほどです。

 弁護士の仕事においても、相談者・依頼者の話を聞くことは非常に重要です。相談者・依頼者の話を丁寧に聞くことから弁護士の仕事が始まるといっても過言ではありません。

 もっとも、相談に来られる方は、寡黙な方もいれば、饒舌な方もいます。

 また、相談内容は時として他人に知られたくない事情が多く含まれています。

 そのような中で、少しでも安心して事情を話していただくためには、人の話を「聞く」コツが必要となります。

 阿川佐和子さんの『聞く力 心をひらく35のヒント』は、そのコツを教えてくれました。