弁護士工藤寛太(京都弁護士会所属)の刑事手続案内(1)

京都の弁護士、工藤寛太です(京都弁護士会所属)。

これから、刑事手続に関するブログも書いていこうと思っているのですが、本日はその前提として、刑事手続に関わる人たちについてご紹介しようと思います。
刑事手続に関わる人はたくさんいます。その中でも、その法律的な存在や役割が分かりにくかったり、誤解されがちな人について、ご紹介したいと思います。

まず、捜査機関である警察官と検察官です。
警察官については、私がご紹介するまでもなく、みなさんご存知だと思いますので、ここでは検察官についてご紹介したいと思います。
10年ほど前、日本を代表する男前が検察官役を演じたドラマが人気を博したこともあり、なんとなくのイメージを持っている方は多いかと思います。しかし、なんとなくは分かるが、結局検察官というのは何者なのか、と疑問に思っている方も少なくないと思います。私も、「警察と検察は何が違うの?」と何度も聞かれたことがあります。
検察官は、警察官と協力して犯罪の捜査を行う立場にあります。事件についての証拠を集め、自ら被疑者の取調べも行います。では、警察官とはどこが違うのか。いろいろとありますが、最も分かりやすいのは、裁判に立ち会うのは検察官の仕事だという点でしょうか。警察官は、裁判に立ち会うことはありません。また、検察官は、裁判官や弁護士と同じ法律の専門家なので、法律上の問題点も考慮して捜査を行うことになります。一方で、警察官と違って、逮捕術を習ったりはしませんし、武器も携帯していません。警邏や職務質問などをすることも基本的にありません。また、検察官は被疑者が浮上してから捜査に関与することが通常ですので、被疑者が誰か分からない段階で、被疑者を探すための捜査をするのは、基本的には警察官の仕事だと言えます。
少し不正確かもしれませんが、抽象的に定義するならば、検察官は、主に法律的な観点から事件を捜査し、被疑者を裁判にかけるかどうかを決定し、裁判に立会い、事案の真相を明らかにすることがその職務だと言えるかと思います。
この情報を前提に、次の月9をお楽しみいただければと思います(某テレビ局の回し者ではありません。)。

続いては、捜査の対象である被疑者です。
罪を犯したと疑われる者は、被疑者(疑いを被される者)と呼ばれます。「被告人」という言葉もありますが、これは起訴されて裁判にかけられることになった者を言います。被疑者が起訴されれば被告人になるということです。テレビ等では「被告」と言われていますが、法律的には被告人という言葉が正確です。

さらに、裁判官も刑事手続において重要な役割を果たします。
裁判官の職務といえば、起訴されて裁判にかけられた被告人について判決を言渡すことが、第一に浮かぶと思います。もちろん、それも裁判官の重要な職務です。しかし、起訴される前(被告人になる前)の刑事手続においても、裁判官は重要な役割を担っています。例えば、被疑者を逮捕するためには、現行犯逮捕の場合を除き、裁判官が発する逮捕状が必要です。捜索・差押え(いわゆる「ガサ入れ、家宅捜索」)を行うにも、原則的に裁判官の発付する捜索差押許可状が必要です。後日のブログで詳しく説明しますが、被疑者を勾留するためにも、裁判所の判断が必要です。

最後に、弁護士です。
弁護士が、どの時点でどのように刑事手続に関与することになるのかということについては、鈴木弁護士のブログの中で丁寧に分かりやすく解説されています。私の方でも、刑事手続における弁護士の活動についてのブログを書きたいと思います。